失敗に学ぶ不動産の鉄則/幸田 昌則


“失敗に学ぶ不動産の鉄則 (日経プレミアシリーズ)” (幸田 昌則)

幸田さんの書籍は、「下がり続ける時代の不動産の鉄則」を読んだ2004年以来なので、久しぶりに手にとった。

あの頃は、マンションブームでボクの周りでも沢山の人がマンションを買っていった。買うほうが借りるより月々の支払いは安くなるケースが殆どで、賃貸を選んでいるほうが馬鹿と思われる時期だった。
ボク自身はマンションには興味がそもそもなく、買うとしても一戸建てを考えていたので、当時は完全な傍観者だった。ただ、傍観者ながらよくそんな思い切ったことができるなぁと半分飽きれてもいた。仮にボクがマンション住まいでもいいやと思ってたとしても、多分、そういう決断は下せなかったろうなぁと。

この先、どこで暮らすことになるかもわからない。自分の給料がこの先も上がり続くとも知らない。不動産を持ってしまったがゆえに自由度がなくなる、選択肢が狭まるということはないのか?

そもそも人口減少に転じてGDPはいずれマイナス成長に向かうのはわかりきってるのになぜ35年とかそんな期間、ローンが組めるのか? インフレが続く保証はないしデフレになれば、金利が低くとも借金の実質負担は大きくなる。インフレ前提のときとはローンの重みは全く違うものになる。

そういう話をすると、多くの人は「そんなのいざとなったら売ればいいじゃん、売値のほうがローン残債額より少なくなることはないだろう」なんてことを言うのだが、本当にそうなんだろか?

新築マンションなんて1日でも住んでしまえば「中古」だ。中古なので余程のものでないかぎり、まず新築売値よりは下がる。しかも、新築売値は、ディベロッパーやらの売り手側の論理で付けられている値段だが、中古市場は基本需要と供給のバランスで決まる。価格決定の仕組みは全然違うので、いくら新築でその新築額の値引きがスゴかったからといっても、中古市場の価格には関係ない。中古は需要がなければ値が付かない。

需要が多い物件なら大丈夫? 便利な場所にあるし、装備も十分だし、この物件は人気物件だから値崩れしないよ。え、でも、その周辺には他のデベロッパーも同じようなことを考えて物件を立てていくでしょう。必ずしも、あなたが住んでる物件だけがいつまでも価値が高いわけでもあるまいし。人気のある、あるいは今後人気になりそうな地域にはここぞとばかりにデベロッパーは進出する。最初は、その物件だったものが気付けばその地域の需要を大きく上回る物件が供給されてしまってるなんてことだって十分考えられるのでは? 
その物件の価値であったすぐ近くの大型ショッピングセンターが経済危機で撤退してしまう可能性だってあるんじゃないの? 何年後か交通機関が整備されより発達するなんて見込みも経済状況によっちゃどうなるかなんて誰にもわからない。

ましてだ。人口は減少する。人口が減少するということはもう絶対で避けられない事実。
このあたりのことを裏付けるような数値がでている。ここ数年のブームで過剰な供給が続けられてきた不動産業界だが、案の定、「国内の空き家数は約700万戸」。さらに「住宅の空家数や空家率の高い地域は東京23区、や大阪市など大都市」となっていて、「大都市では空家率が10%を超えるところまで上昇」ということだ。
公示価格で見ればまだ値下がりしてないし問題ない。いやいや、公示価格と実勢価格の差はけっこう大きいんじゃないか。東京都心部は2008年3月の公示価格は上げ幅は小さいけど、連続して上昇してる。でも、実際はどうか? すでに地価下落に拍車がかかってるという状態ではないか。
こいう状況でも、必ず売値がローン残債額を上回るんだろうか??

というような「当たり前」のことを、不動産をマイホームとして買う人、あるいは投資として買う人、不動産会社を営む人、金融機関など、不動産を取り巻く様々な人達に向けてわかりやすく語ってる。
こんなリスクばかりだから「買うべきではない」と言いたいわけではない。買う場合にどれだけ慎重に、どれだけ将来のことを考え、そして可能な限りのリスクを回避する手法をとって買えるか、そこが大事だと説く。言われてみればそれも当たり前だろう。なにせ、あれだけの高額の買いものなのだから。

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