キミがこの本を買ったワケ
キミがこの本を買ったワケ
タイトルからして自己言及の迷宮に誘い込む仕掛けになっている。
この本を買わないと、この本を買ったワケはわからないが、この本を買うのは「この本を買ったワケ」を知りたいからだ。そして表紙絵もそう。表紙絵でこの本を持っている男性。その本の中には、同じく男性がこの本を持っている。そしてその男性が持っている本にもこの男性が本を持っていて、、、という具合にエッシャー的な世界が続く。
一遍一遍は短く簡潔にまとめられたコラムのような構成なのだが、これが結構面白い。うん、うん、確かにそうだな。ははぁん、と言われてみれば確かにそうだよなぁということが満載だ。
「実は口コミで買ったことがない理由」なんていう見出し。昨今のマーケティング業界じゃ「口コミ」「バイラル」が最も注目されている。それのまったく逆を行くようなこの意見。でもこれも言われてみれば確かになぁと思える。
友人が貸してくれた本なんて読まないでしょ、という最もな指摘や、アンケートやインタビューの際に答える側は、相手の意図を読み取った回答をするものだという考え方。身の回りのモノで友人に薦められて買ったものがありますか? うーん。確かに。マックも、車も、ケータイ電話も、冷蔵庫も、電子レンジも、机も、ガスヒーターも、、、 友達に薦められたから買ったものは一つもなかった。
なるほど。(でも、最終決定の前に、肩を押してもらったものはいくつかあるけどな)
さて、本書のなかで面白かった話を1つ。マジシャンのデビッド・ブレインの話。
以下の文章を読みながら、あなた自身も数字を思い浮かべてみて欲しい。
「1つお願いがある。50までの数字から1つ思い浮かべてほしい。あっ、難しい数字がいいな。2桁で。そうだ奇数だ、どちらの数字も奇数がいい。ゾロ目は駄目だよ。それに切りのいい数字もダメだ。とにかく難しい数字、割り切れない数字がいい。1の桁と10の桁が異なる奇数だ。いいかい? 思い浮かべた?」
その答えは。。。「37」だ。どうだろう? まんまと37を思い浮かべた人も多いのではないだろうか。
これをボクはこの前実際にやってみたのだが、1人はまんまとはまった。
確かに本書にでてくる「魔法のヴェール」というものはあるんじゃないかと思う。50までの難しい数字。奇数の並び、というと、多くの人がなぜか37を思い浮かべるそうだ。外人のマジックとして成立するということは、この感覚は万国共通ということか?